高専って何?普通の高校と何か違うの?
どんな人が通ってるの?
高専にいくメリットやデメリットは何?
中学受験の準備が始まると、「高専」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
「高専」は世間ではあまり知られていませんが、実はとてもおもしろく、価値ある学校なんですよ。
私は高専の機械工学科を10年前に卒業して大企業に就職しました。
今や高専は多くの大企業がその卒業生を欲しがるほど需要が高い学校です。
この記事では、高専に少しでも興味を持ってもらうために、高専OBの私が高専について分かりやすく紹介していきます。
中学生の方は受験候補の参考にしていただければ幸いです。

「早くいいところで就職したい!」という思いから、猛勉強して高専機械工学科に入学しました。
機械工学科を選んだのは、単純に人気が高かったことと親父の職業が機械系だったから。
2013年に高専を卒業してからは、憧れだった大手製造メーカーに就職。
「高専卒でも大卒に勝てる!」をモットーに社会人になっても猛勉強してたくさんの資格を取ってきました。
4度の昇格試験を乗り越え、今では大卒と同じ出世のレールに。
給料も安定して結婚、マイホーム建築と毎日が充実したワークライフを送っています。
高専とは「高等専門学校」の略で5年制の学校です
高専とは「高等専門学校」の略で5年制の学校です。
主な学科は、機械・電気・情報・建築・化学などがあります。
高等専門学校の学科一覧(令和5年4月現在):文部科学省 (mext.go.jp)
ほとんどが工業系の学校で「現場で活躍できる技術者」を養成する学校です。
高専の中には商船高等専門学校もありますが、こちらは5.5年制の学校で卒業式がなんと9月になります。
「陸で活躍したいか」、「海で活躍したいか」の違いと思ってください。
この記事では、普通の高専について解説しています。

普通の高専というのもなんか違和感ありますが…
高専はほぼ全国各地にあります
高専は国立・公立・私立合わせて全国に58校あり約6万人もの学生がいます。
全国といいながらも、埼玉、神奈川、滋賀、山梨、佐賀の5県には高専がありません。
しかし、2027年に滋賀県に「滋賀県立高等専門学校(仮称)」が開校予定となっています。
国立高専(51校)
- 函館高専
- 苫小牧高専
- 釧路高専
- 旭川高専
- 八戸高専
- 一関高専
- 仙台高専
- 秋田高専
- 鶴岡高専
- 福島高専
- 茨城高専
- 小山高専
- 群馬高専
- 木更津高専
- 東京高専
- 長岡高専
- 長野高専
- 富山高専
- 石川高専
- 福井高専
- 岐阜高専
- 沼津高専
- 豊田高専
- 鳥羽商船高専
- 鈴鹿高専
- 舞鶴高専
- 明石高専
- 奈良高専
- 和歌山高専
- 米子高専
- 松江高専
- 津山高専
- 広島商船高専
- 呉高専
- 徳山高専
- 宇部高専
- 大島商船高専
- 阿南高専
- 香川高専
- 新居浜高専
- 弓削商船高専
- 高知高専
- 久留米高専
- 有明高専
- 北九州高専
- 佐世保高専
- 熊本高専
- 大分高専
- 都城高専
- 鹿児島高専
- 沖縄高専
公立高専(3校)
- 東京都産業技術高専
- 大阪公立大学工業高専
- 神戸市立工業高専
私立高専(4校)
- サレジオ高専
- 国際高専
- 近畿大学高専
- 神山まるごと高専
男女比は8対2です(もちろん男子が8割)


国立高専に在学する学生の男女比は約「8対2」となっています。(もちろん男子が8割)
引用:国立高等専門学校機構


男女比は、学科によって大き異なります。
私が専攻していた機械工学科ではクラス40人の中で女子は1人だけでした。
それに比べて建築系は「男女比が6対4」くらいありました。
高専で青春を過ごしたければ、行きたい学科の男女比は必ずチェックしよう!
「なぜ受験応募前に男女比をチェックしてなかったんだ」
私は今でも後悔する日が…
本科を卒業したら「準学士」|専攻科を卒業したら「学士」
高専5年間の在学期間を「本科」と呼び、卒業したら「準学士」の称号が得られます。
とは言っても「準学士」というのは日本国内のみに通用する称号のようです。
短大卒業生が得られる「短期大学士」と同じレベルになります。
高専卒業後、さらに「専攻科」というコースに進学して2年間の教育課程を修了すれば、「学士」の称号が得られます。
これで晴れて4年生大学卒業生と同じレベルになれます。
中学卒業から就職までのフローを図にすると下の図のようになります。


高専の受験方法には「推薦入試」と「学力試験」があります
高専を受験するには、まず中学校を卒業する必要があります。(当然ですね)
受験方法には「推薦入試」と「学力試験」の二つがあります。
推薦入試
推薦入試は毎年1月頃に行われ、成績がよく学校から推薦をもらえると受けることができます。
試験内容は高専によって異なるようですが、私の高専では「小論文試験」と「面接試験」がありました。
中学の成績がそこそこよく、学校から推薦をもらえたのですが、とくに小論文も面接も対策をしていませんでした。
小論文は課題を読んでも意味が分からず、半分白紙でも時間となりそのまま提出。
面接は「車をつくりたい!」と言ったら、「車は一人でつくれません」と面接官に返され、それでも「一人でつくれるくらい頑張る!」と連呼したら失笑されました。
結果、見事に落とされました(笑)
学力試験
学力試験は毎年2月頃にあり、試験科目は主に「国語」「数学」「英語」「理科」「社会」の5科目です。
「英語」や「社会」の試験がないところもあるようです。
高専では「数学」や「理科」といった特定の科目を、150点や200点満点とする「傾斜配点」を採用しているところもあります。
傾斜配点とは、特定の科目の配点を高くしたり低くしたりすることです。
当時、私の高専では「数学」と「英語」が150点満点となっていました。
各高専で傾斜配点にしている科目が違うので、高専受験生は試験要綱をしっかり読んでおきましょう。
受験倍率


推薦入試も学力試験も、「どこの高専か?」「何の学科か?」によって倍率は異なります。
人気の高専や学科によっては倍率3.0以上のところもありますが、倍率1.0以下の学科も複数あります。
詳しくは各高専のHPに載っているので、気になる方は調べてみましょう。
高専の偏差値
高専の偏差値は学科によっても異なりますが、全国58校ある半数以上が偏差値60を越えます。
偏差値50を下回る高専もいくつかありますが、全体的に偏差値は高い傾向にあります。
偏差値69が一位で、偏差値47が最下位となっています。
一方でどの高専に入っても、授業カリキュラムは同じです。
また卒業して社会に出てしまえば、「高専卒」という一括りで同じ扱いとして見られます。



高専卒同士だと偏差値争いが起きます(笑)
国立高専の学費は長い目で見ると安くてコスパ最強


高専は5年制なだけあって、公立高校の3年間に比べると授業料が高いです。
では高専の学費がどれくらいになるのか見ていきましょう。
国立高専と公立高校の「入学金」と「授業料」は国立高専の方が高い
国立高専の「入学金」は84,600円で公立高校の「入学金」は5,650円です。
「入学金」の差は78,950円です。
国立高専の授業料は年間234,600円で公立高校の授業料は年間118,800円です。
「授業料」の差は115,800円です。
「入学金」「授業料」ともに高専の方が圧倒的に高額となります。
世帯年収910万円未満は「高等学校就学支援制度」が適用
先ほど「授業料」を述べましたが、世帯年収910万円未満であれば「高等学校就学支援制度」が適用されます。
「高等学校就学支援制度」は、世帯年収が910万円未満であれば、月額9,900円(年間118,800円)が支給されるといった制度です。
高等学校等就学支援金制度:文部科学省 (mext.go.jp)
高専の場合は、1~3年生の3年間が対象となります。
公立高校の授業料は月額9,900円で、世帯年収910万円未満であれば実質授業料無料となります。
高専の場合は月額9,900円引いて、授業料は年間115,800円になります。(通常234,600円)
引用:国立高等専門学校の授業料その他の費用に関する省令 | e-Gov法令検索
やはり高専の方が高いことに変わりはありません。
結論|大学卒業まで考えると高専の方がお得!
これまで述べてきたとおり、高専と公立高校の学費を比べると、高専の方が圧倒的に高額です。
しかし「公立高校から大学に進学するまで」で考えると、大きく変わります。
国立大学の「学費」は年間535,800円で「入学金」は282,000円となっています。
引用:国公私立大学の授業料等の推移(文部科学省)
大学卒業の4年間では、2,425,200円の学費がかかります。
それを踏まえて分かりやすく表にまとめました。
項目 | 国立高専 | 公立高校+大学 | ||||
学年 | 910万円未満 | 世帯年収910万円以上 | 世帯年収学年 | 910万円未満 | 世帯年収910万円以上 | 世帯年収|
入学金 | 高専 1年生 | 84,600円 | 84,600円 | 高校 1年生 | 5,650円 | 5,650円 |
授業料① | 115,800円 | 234,600円 | 0円 | 9,900円 | ||
授業料② | 高専 2年生 | 115,800円 | 234,600円 | 高校 2年生 | 0円 | 9,900円 |
授業料③ | 高専 3年生 | 115,800円 | 234,600円 | 高校 3年生 | 0円 | 9,900円 |
入学金 | 高専 4年生 | 0円 | 0円 | 大学 1年生 | 282,000円 | 282,000円 |
授業料④ | 234,600円 | 234,600円 | 535,800円 | 535,800円 | ||
授業料⑤ | 高専 5年生 | 234,600円 | 234,600円 | 大学 2年生 | 535,800円 | 535,800円 |
授業料⑥ | 大学 3年生 | 535,800円 | 535,800円 | |||
授業料⑦ | 大学 4年生 | 535,800円 | 535,800円 | |||
合計 | 901,200円 | 1,257,600円 | 合計 | 2,430,850円 | 2,460,550円 |
公立高校から大学までの「入学金」と「授業料」で見ると、高専の方が150万円以上も安くなります。
補足|教育にかかる費用は「入学金と授業料」だけではない!
「入学金」と「授業料」だけの比較をしてきましたが、国立高専も公立高校も関係なく、その他にも教育にかかる費用はかかります。
- 教材
- 運動服
- 修学旅行
- 通学費
- 寮費
- 部活動
- 塾
- その他諸々
教材や運動服、寮費にかかる費用などは、各高専でのホームページで公開されているのでチェックしてみてください。
簡単に調べた結果、教材や運動服代などで年間約30万円、寮費は年間約45万円となりそうです。
項目 | 金額 |
---|---|
学生会、教科書、 運動服代など | 約300,000円/年 |
寮費 | 約450,000円/年 |
塾や部活動をすると、さらに追加費用が発生するので参考までに頭に入れておきましょう。
高専にはどんな人がいる?
ここまで紹介してきて高専の印象は、「理系に強い工業系」「頭が良い」などイメージが膨らんだのではないでしょうか。
では実際に「どんな人が高専にいるのか」高専OBである私が解説します。
少し主観が強いかもしれませんが、ご承知おきください。
8割がオタク&メガネで形成されています


高専は「オタク学校」というのが世間のイメージではないでしょうか。
まさにその通りで、8割以上がオタクで形成されています。
そして同じく「メガネ率」も8割です。
私が専攻していた機械工学科も8割以上がオタク&メガネでした。
アニメ、アイドル、ゲームはもちろん、電車、飛行機、なぜかトイレ専門科もいました。
オタクというと悪いイメージを持たれがちですが、実際に話をすると活き活きとしていて輝いて見えます。
実はチャラ男やパリピも結構いる
8割以上がオタクという話をしましたが、必ずしも陰キャとは限りません。
チャラ男やパリピも普通にいます。
1年生の頃から茶髪、ピアスで通学する人もいれば、寮生にはジャージやパジャマ姿で授業を受ける人もいました。



校則がゆるいので、どんな服装や髪型でも授業の邪魔にならない限り怒られたりしません。
また中学時代の部活動で、全国大会出場の経歴を持つバリバリの体育会系もいました。
オタクだけでなく、チャラ男やパリピ、体育会系、ホントに色んな人が集まっていました。
やはり理系が多いです
高専に入るとやはり理系に強い人が多いです。
私も理系には自信がありましたが、上には上がいることを思い知らされました。
とくに数学の授業スピードは速く、2年生で普通高校の範囲が終わり、3年生になると大学レベルの範囲を学びます。
理系に強い私でもついていくのに苦労しました。
逆に文系は少なく、国語のテストは私含め多くの人が悲惨な結果でしたね(笑)
高専を目指すメリット3選


高専OBの私が「高専を目指すメリット」を3つ紹介します。
- 就職率ほぼ100%で大企業にも入りやすい
- 大学編入で進学もできる
- 校則がゆるく5年間でいろいろ経験できる
就職率ほぼ100%で大企業にも入りやすい
私が思う高専の一番の魅力は、「就職率ほぼ100%」なとこです。
さらに就職先は一度は耳にしたことがあるような大企業ばかりです。
私が高専を受験しようと思った理由もそれらがあったからです。
実際に就活のときには、たくさんの大企業から求人があり、推薦応募という形で大学生に比べると簡単に就職できます。
「将来は大企業で働いてみたい」と考えているなら、高専はうってつけなのです。
大学編入や専攻科進学で「学士」も得られる
「就職率ほぼ100%」を売りにしているので卒業後は就職のイメージだと思いますが、「大学3年生に編入」したり「専攻科」へ進学する人もいます。
高専卒で就職するよりも大卒で就職した方が当然給料は良いです。
私のクラスでも、10名ほど大学へ編入し、5名ほどが専攻科へ進学しました。
編入試験は、大学入試のセンター試験とは違って各大学で日程がバラバラのようです。
そのため複数の大学の編入試験が受けられます。
さらに編入試験では受験者数も少ないので、比較的受かりやすいとされています。
高専卒よりも大卒の方が給料は良いと言いましたが、高専卒でも出世すれば大卒を越すことはできます。
校則がゆるく5年間でいろいろ経験できる
先にも述べましたが高専は、髪を染めて私服で通ったり、バイトできたりと校則はゆるいです。
私は1~3年生までは制服で通いましたが、1年生の頃からジャージの人もいました。
4年生からは私服になりました。(私服はそれはそれで毎日センスが問われるのでめんどくさかった…)
また学校に申請して許可をもらえば、バイトも自由にできます。
私も1年で野球部を辞めて、セブンイレブンや塾講師のバイトを卒業するまで続けました。
校則がゆるいおかげで5年間の高専生活でさまざまな経験ができます。
高専を目指すデメリット3選


続いて「高専を目指すデメリット」についても3つ紹介します。
高専受験を考える人はデメリットもしっかり見ておこう!
- 女子が少ない(女子にはメリット?)
- 単位を落とすと留年
- 授業のほとんどが会社で活かせない
女子が少ない(女子にはメリット?)
機械工学科だった私のクラスの女子は40名中1名だけ。
「女子との青春学園生活!」なんてのは期待できないので、あらかじめ知っておいてほしい。。。
反対に女子にとってはメリットかもしれません。
気になる男子を選び放題!(オタクばかりですが…中にはイケメンも…)
単位を落とすと留年
普通高校の赤点はだいたい30点未満ですが、高専は60点未満で赤点が通常です。
入学時40名いた私のクラスも、数名は留年で落ちていき、また数名は上から落ちてきて仲間に加わるという、卒業までにちょっとした入れ替わりがありました(笑)
また定期テスト以外にもレポート課題などの提出物も鬼のように出て、単位に関わるのでかなり勉強しなければなりません。



「定期テストの時は徹夜で勉強」、「提出物は徹夜で完成させる」というのはあるあるな話
授業のほとんどが会社で活かせない
ものづくりが好きという理由で何となく機械工学科に入学しましたが、4年生の頃になると訳の分からない授業がほとんど。
「制御工学」「情報処理」「メカトロニクス」など、「ホントに社会で使うのか?」というくらい訳の分からん授業が増えていきます。
ただ全く興味が無くても単位のこともあるので勉強しなければなりません。



授業についていけず、レポートは友達に見せてもらったり、定期テストは過去問を解きまくって対応していました…
まとめ


高専を知らない人のために、なるべく分かりやすく紹介してきました。
「オタクが多い」「女子が少ない」「勉強が大変」といった悪い印象が目立ってしまいましたが、なんだかんだ卒業してしまえばいい思い出です。
今こうして大企業でのびのび働けているのは高専のおかげです。
どこの高校にいっても正解・不正解なんてありませんが、この記事が少しでも高専受験の参考になれば幸いです。
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